新型コロナウイルスは、全人類そして全産業へ影響を及ぼすこととなりました。もちろん自動車産業へも著しく波及しています。 3月中旬頃から工場作業者への感染が始まり、一時的な操業停止から次第に長期間全面的に稼働がなくなるといったフェーズへと移行してしまいました。
生産ができないことと先行き不透明感が強くなったためほとんどの期間工の募集は停止となっており、Twitterや YouTubeなどでは、期間工広告の案件が停止したため、収入の道が途絶えたという投稿が散見されます。そして募集会社や派遣会社の株価は軒並み下落してます。
リーマンショック時と同じく期間従業員や派遣社員を減らして需要の減少に対応するという今までと代り映えのない方策で乗り切ろうと必死ですが、恐ろしいのはこれまで経験したことのない巨大なインパクトとなってしまう可能性を秘めているという現実に直面していることです。
2008年のリーマンショックは金融危機でした。サブプライム住宅ローン問題とも重なり、北米での販売が大きく落ち込んだのですがこの時は世界の工場へと成長していた中国が需要の受け皿ともなり、一番マイナス幅が低かったアジアから回復していきました。
2011年の東日本大震災は自然災害でした。インフラが寸断され、部品の供給、設備の修理など復旧に大変人力がかかりましたが、アメリカを中心とした各国からの支援と日本人持ち前の国民性により自動車産業はいち早く立ち直りました。
今回の新型コロナウイルス COVID-19は疫病です。過去人類はスペイン風邪と言うパンデミックを経験しています。 1918年8月~1921年7月まで約3年、流行期は3回ありました。日本の全人口5500万人のうち約2380万人が感染していると統計数値に残ってます。
この時、薨去された皇族の中には、 竹田宮恒久王という方がおられます。曾孫に当たる方は元皇族の評論家として現在テレビなどで拝見するお馴染みの竹田恒泰さんです。
有効な防疫態勢を速やかに構築して、開発、生産、物流などの経済活動を再開させたいところですが、ウイルス自体未知数な部分を秘めているため、まだまだ時間を要するのではないでしょうか。
それでは、時系列で主要な各自動車メーカーの対応をまとめておきたいと思います。
トヨタ
感染者
3月19日に高岡工場で陽性反応者1名。 即時消毒作業を行い稼働再開。濃厚接触者と思われる11名は2週間の自宅待機。
高岡工場の濃厚接触者1名が3月20日に陽性反応(二次感染)。高岡第1ラインは3月23日から3月25日まで稼働停止して消毒及び感染対策。
3月23日トヨタ自動車九州で30代男性が陽性反応。濃厚接触者該当なしという保健所の判断から宮田工場 第2ラインは3月26日から稼働。
元町工場で4月2日に20代1名が救急搬送された医療機関で陽性反応。職場には3月25日から出社しておらず年休取得中に東京で罹患したとされて職場での濃厚接触者は無し。寮の共用スペースで2名と接触。2名は2週間の待機命令。
4月11日に本社地区事務系の職場で30代の協力会社社員1名が陽性反応。3月27日以降、出社してはいなかったが、接触の可能性がある10名を4月9日から4月13日まで自宅待機。
稼働停止期間
4月3日から最長で4月14日まで5工場の7ライン
5月12日から最長で5月18日まで5工場の9ライン
4月3日から4月15日までトヨタ自動車九州 宮田工場の第1ライン
海外部品の調達難で稼働停止
4月20日から4月22日 高岡工場第2ラインと豊田自動織機 長草工場 301、302ライン
1直化
5-6月 3工場の4ライン
要因を新車需要の低迷としている。
日産
感染者
3月31日に日産自動車九州で20代男性1名が陽性反応。4000人の従業員は自宅待機。4月3日まで稼働停止。
4月4日本社勤務の社員1名に陽性反応。3月20日以降、出社しておらず在宅勤務であったため、保健所は濃厚接触者はいないという判断。
稼働停止期間
追浜工場は4月3日、13日、24日、5月5日、11日
栃木工場は4月6日から10日、4月13日から17日、4月20日から22日、5月1日、5月11日から15日、5月18日から20日、5月28日から29日
日産自動車九州は4月2日から3日、4月6日から10日、4月13日から17日、4月20日から24日、4月27日から30日、第2工場は、5月14日~15日、5月18日~22日、5月25日から29日の夜勤停止と5月1日、5月11日から13日の稼働停止
臨時休業
4月27日から5月1日まで5日間の本社地区、厚木地区、追浜地区、栃木地区の事務職約1万5000人が休業。
ホンダ
感染者
3月26日埼玉県朝霞市の事業所で従業員1名が陽性反応。濃厚接触者はなし。消毒対応を経て3月30日より再稼働。
4月7日栃木県芳賀郡の事業所で従業員1名が陽性反応。保健所の指示のもと対応を実施する。
稼働停止期間
鈴鹿製作所 No.1 完成車ライン4月17日から4月24日まで生産稼働休止。
埼玉製作所 狭山工場 完成車ライン4月27日から5月1日、埼玉製作所 寄居工場 完成車ラインを4月27日から4月29日の期間生産稼働休止。
マツダ
稼働停止期間
宇品第1工場、第2工場、防府第1工場、第2工場は3月28日から4月1日、4月6日から8日、4月13日から15日、4月20日から22日、加えて防府第2工場は23日も稼働停止。
4月27日から5月1日まで休業。
宇品第2工場と防府第2工場は、5月11日から12日、5月20日から22日、5月25日から29日の期間停止。
スバル
稼働停止期間
群馬製作所 本工場および矢島工場、大泉工場は当初予定していた4月11日からの停止を2日前倒しして、4月9日~5月1日の期間稼働停止。大型連休明けの5月11日から再稼働予定。
三菱
稼働停止期間
水島製作所 第1組立ラインが3月27日から4月14日まで 水島製作所 第2組立ラインが4月6日から4月23日まで 岡崎製作所 組立ライン4月9日から4月17日まで パジェロ製造 組立ラインは4月13日から4月30日まで稼働停止。
ダイハツ
感染者
4月26日大阪府池田市の本社地区で従業員1名に陽性反応。在宅勤務中だったため濃厚接触者はなし。
稼働停止期間
滋賀(竜王)第2工場は4月13日から4月21日までだったが期間延長で4月22日から4月24日まで稼働停止。
本社(池田)工場は5月1日、11日、12日。京都工場は5月1日と11日が稼働停止。
スズキ
稼働停止期間
磐田工場、相良工場は4月20日から4月24日、4月27から4月28まで稼働停止。
海外からの部品調達に目処が立たず、5月11日以降も磐田工場は14、15、22日に稼働停止予定。湖西工場は一部稼働。
今後の見通し
明るいわけがありません。 フォルクスワーゲングループが2020年の第1四半期(1月~3月)世界販売実績を発表していますが、 109万1500台で前年比23%減のマイナスです。売上高は11.9%減、営業利益は47.7%減。
IHSという調査会社が試算した数字によると、2020年の世界新車販売は約2割減の7145万台になると予測されています。この数字はさらに悪くなることはあっても良くなることはまずないと見込んでいます。
リーマンショック時の2009年でさえ12%減だったため、今回のコロナ禍における衝撃は過去にない未曽有の惨事となってしまう可能性を秘めています。
2009年のトヨタは4369億円の赤字でした。戦後初、59年ぶりという結果だったわけです。
丁度この頃、設計エンジニアとしてトヨタ自動車の技術開発部門に在籍していましたが、周囲の狼狽ぶりは凄い様相を呈していましたし、とにかく削れるものはいち早くコストカット、お金を使わずに後回しにできるものはやらないという方針で一貫していました。
それでもこれだけの赤字額を出したのです。
最後に自工会が発表している世界の生産台数と販売台数を引用しておきます。
16年~18年の生産台数
15年~17年の販売台数